目次
レビュー概要
実際に購入して、数週間ほど自宅と屋外を行き来しながら使い込んだ。最初に驚いたのは、名前の通りの薄さと、置いたときの収まりの良さ。背の低い本体がテーブル面に近い位置で鍋を支えるので、視線の動線が自然で、火加減の微調整がやりやすい。ケース付きなので持ち出しも気楽だが、今回は「ありがちな使い方」は避けて、夕暮れのベランダで少量のサーディンをオイル煮にしたり、仕込みの途中で温度を段階的にキープする用途を中心に試した。風のある日でも炎がふらつきにくく、火勢の立ち上がりが一定で、狙った温度域にすっと入る感じ。正直、これが一番気持ちいい。
操作感は軽く、つまみのストロークに無理がない。点火は躊躇なく一発で決まり、火力調整は細かく刻める。さらに五徳が平坦で安定感があり、底の広い浅型パンをのせてもぐらつかない。薄型なのに、手元で炎が見やすいのも助かる。台所のシンク脇で作業しながら、少量のソースを保温したり、瓶詰めの湯煎を短時間で済ませたり、とにかく「ちょっと火がほしい」場面で出番が多かった。掃除は拭き取り中心で済み、凹凸が少ない形状は日々の手入れを軽くする。ケースは片付けの心理的ハードルを下げ、使い終わったらそのまましまえる。使う前よりも、使った後の気持ちが軽くなる道具だ。
サイズ感と薄さは、テーブルコーディネートの邪魔をしないという意味でも優秀だと感じた。鍋やカトラリー、ドリンクを並べても「コンロが主張しすぎない」ので、写真撮影をする時にも構図が組みやすい。実際、フード撮影の現場に持ち込んだ際は、小さなテーブル上でもワンプレートとコンロを無理なく共存させることができ、撮影と調理を同じスペースで回せたのは大きなメリットだった。
特徴
イワタニ カセットフー 達人スリムV ケース付き CB-TS-5-Aを選んだ一番の理由は、IHしかない自宅で「微妙な火加減が必要な作業」をできる環境を作りたかったからだ。例えば、写真撮影現場でソースを湯せんして艶を出す、ベランダで軽い燻製の予熱だけ済ませる、停電時にコーヒー用の湯を素早く沸かす——どれも小回りと即応性が大事で、電気よりガスの直火が向いている。達人スリムVは薄型で道具の周りに置きやすいこと、専用ケース付きで現場持ち出しが楽なことが決め手になった。価格で選んだわけではない。必要だったのは、「確実に着火して、狙った温度帯を保ち、片付けが簡単」な一台だ。
開封してまず感じたのは、ケースの扱いやすさ。フタの開閉が軽く、指を挟むような不安がない。中の本体は梱包材の匂いもほぼなく、外装の塗装ムラやエッジのバリも見当たらない。ダイヤルを回したときの抵抗感は均一で、クリックが強すぎず弱すぎず。カセット装着は、差し込んでロックするまでの動作が短く、手元を見なくても指の感触で「固定された」ことがわかる。初回着火は一発。点火音は控えめで、火が立ち上がるスピードは素直。ケースから出して点火まで、手順が少ないのがいい。
実際に触ってわかった仕様の良さは、まずこの薄さ。鍋底と炎の距離が近く、熱が逃げにくい。五徳の形状は鍋の中心に意識を集めてくれる感じで、湯せん用のボウルでも安定した。ゴム足のグリップがしっかりしていて、ステンレストップのテーブルでも滑らない。レバー操作は軽いが、軽すぎて不安になるほどではない。どこまでが着火可能域で、どこからが消火か——ツマミの可動域の端に近づくと火がすっと落ちる挙動は「癖」と言えるが、慣れると狙いがつけやすい。音は中火域で低めのホワイトノイズに近く、会話の邪魔をしない。炎の色は素直な青で、鍋底の端まで広がり方が均一。長時間連続使用時に本体側面がじんわり温かくなるが、素手で触れないほどではなかった。
スペックが体験にどう影響したか。薄型ゆえ、屋外のベランダで風が通る状況でも鍋底に熱がしっかり当たる。湯せんの温度帯を例えば60〜70度で維持したいとき、中火寄りの弱火に落とすと、温度が波打たず「キープ」に入りやすい。火力の上げ下げに対する反応が速いので、撮影現場で「あと30秒だけ沸騰させたい」といった指示にも合わせられた。湯が沸くまでの体感速度は、同じ容量の電気ケトルより遅いが、鍋のサイズや素材を選べる分、仕上がりのコントロールが効く。ボンベ残量が少なくなっても火勢が急に落ちる感覚はなく、最後まで湯を取りきれたのはありがたい。ケースは移動時の安心感を上げるだけでなく、道具箱に収めたときに他の器具とぶつからないので、外装の傷が増えない——この積み重ねが、長く使う道具としての満足度に直結する。
開封から使い始めるまでの印象をもう少し。ケースから出す、ボンベを装着する、置いてツマミを回す。動作の順番に迷いがない。ダイヤルの目盛りは細かい数字ではないが、位置と火の変化の関係が直感的で、初回でも目標の火加減にすぐ届く。点火後の炎の安定が早いので、湯せんのボウルを載せる時間を待たなくていい。汚れが付いても拭き取りで落ちやすく、布巾で軽く撫でれば指紋も消える。片付けのストレスが小さいのは、結局使用頻度を上げてくれる。
良さと並べて、癖も書く。薄型は視界と作業性に効くが、手前のダイヤルを強めに回しすぎると一気に火が立つので、低温域の微調整は指先の繊細さが要る。五徳は安定するが、極端に小さい器や尖った底のボウルは角度が付くことがある。長時間の連続使用後にすぐケースへ戻すと、内部がほんのり温かくなるので、数分おいてから収納したほうが安心。屋外での風が横から強く吹くと炎が揺れるが、鍋底に近い分、体感の温度低下は思ったほど大きくない。こういう「物理的な癖」を身体に入れてしまえば、狙った通りの結果を出せる。
具体的なシーン。撮影現場でチョコレートソースを湯せんし、艶を保ったまま時間を稼ぐ——これが最初の試験。中弱火に落とした状態で温度計の数字が安定し、ソースの粘度が保たれた。次は停電時の夜、IHが沈黙したキッチンで、保温ポット用に湯を用意。風の入りやすい窓際でも沸騰までの流れが読みやすかった。三つ目はベランダで燻製の予熱。チップを焦がさず、箱の内部だけ温めたい場面で、炎の広がりが穏やかに効いた。いずれも、薄型の視界の良さと、火力の応答の速さが背中を押してくれた。
さらに、休日の昼間にはホットサンドメーカーを載せて軽いブランチを作ってみた。パンの焼きムラが出にくく、火力を少し絞るとチーズがゆっくり溶けてくれるので、時間をかけて仕上げたいときにも向いていると感じた。「コンロを出すほどでもないけれど、トースターだけでは物足りない」という隙間のニーズを、ちょうどいい温度感で埋めてくれる。
使用感レビュー
購入してからちょうど10日ほど経ちました。最初に箱を開けてケースから取り出した瞬間、薄さと軽さに驚きました。見た目はスリムでスタイリッシュなのに、手に持つとしっかりとした金属の質感が伝わってきて、安っぽさはまったくありません。良い点としては、まずケース付きで持ち運びが非常に楽だということ。逆に悪い点として最初に気づいたのは、薄型ゆえにテーブルの上で少し高さが低く感じられ、慣れるまで鍋の位置が近すぎるような感覚があったことです。「お、近いな」と最初は少し身構えましたが、数回使ううちに火との距離感がつかめてきました。
日常の具体的なシーンで役立ったのは、夜遅くにベランダで簡単な料理をしたときです。室内で匂いを残したくない料理を外で作るのに、このコンロはケースごと持ち出してすぐに使えるので便利でした。風が少し強い日でも炎が安定していて、途中で火が消えることもなく安心して調理できました。静音性も思った以上で、ガスが出る音は控えめで近所迷惑になるような心配はありませんでした。ベランダで小さなランタンと一緒に置いておくと、炎の青さと食材の色がきれいに浮かび上がって、ちょっとしたアウトドア気分を味わえます。
使用前は「薄型だから安定性に欠けるのでは」と少し不安を持っていましたが、実際に使ってみると鍋を置いたときの安定感は十分で、ぐらつきはほとんど感じませんでした。むしろ低重心で安心感があり、取り回しもスムーズでした。ケースから出してセットするまでの流れも直感的で、ガス缶の装着もカチッと音がしてすぐにわかるので、操作性は非常に良好です。家族にも一度使ってもらいましたが、「ボンベの装着がわかりやすい」と好評でした。
質感については、表面の仕上げが滑らかで手触りが心地よく、掃除もしやすいと感じました。調理後に油が飛んでも、布巾で軽く拭くだけで綺麗になり、手入れの手間が少ないのはありがたいです。静音性は特に夜の使用で実感しました。火力を強めても音が大きくなることはなく、落ち着いた雰囲気で料理ができるのは予想以上のメリットでした。キッチンでラジオを流しながら使っても、音がかき消されることはなく、BGMと炎が共存できる程度の静かさです。
ギャップとして印象的だったのは、期待以上に取り回しが軽快だったことです。ケースに収めて持ち運ぶときも片手で楽に扱え、収納場所を選ばないのは思っていた以上に便利でした。逆に少し気になったのは、薄型ゆえにテーブルの上で存在感が控えめすぎて、最初は火がついているのかどうかを確認するために近づいて覗き込んでしまったことです。ただ慣れてしまえば炎の見え方にも違和感はなくなりましたし、「主張しすぎない存在感」は普段のテーブル使いではむしろ利点だと感じています。
週末に友人を呼んでベランダで簡単な料理をした際にも活躍しました。ケースから取り出してすぐに使えるので準備がスムーズで、火力も安定していたため途中で調理が止まることもなく、安心して料理を楽しめました。友人からも「見た目がスマートでいいね」と言われ、デザイン面でも満足感がありました。操作性はシンプルで、火力調整もスムーズにできるため、料理の進行を妨げることがありませんでした。ちょっとしたバーニャカウダや、温かい前菜をテーブルで仕上げると、コンロ自体が小さな演出にもなります。
また、平日の夜にはキッチンの片隅で「サブ火口」として使ってみました。メインのIHコンロでパスタを茹でながら、達人スリムVの上ではソースを温め直す、といった同時進行ができるので、時間をぎゅっと圧縮したい平日の調理には非常にありがたい存在です。火力を弱めにしておけば焦げ付きにくく、ちょっとかき混ぜるだけで温度をキープできました。
全体として、購入後10日間の使用で感じたのは、期待以上に安定性と静音性が優れているということ。悪い点としては高さの低さに慣れるまで少し違和感があったことくらいで、それ以外は日常の中で非常に役立つ存在になっています。質感、操作性、取り回し、どれも満足度が高く、ケース付きという点も含めて使い勝手の良さを強く感じています。これからも日常のちょっとした料理や屋外での調理に活躍してくれると確信できる体験でした。
良い点と気になる点
ここまで実際に使ってみて、「ここは人に勧められる」と感じたポイントと、「人によっては気になるかもしれない」と思った部分を整理しておく。
良い点
- 薄型で視界が開ける:鍋底がテーブルに近い位置に来るので、全体の高さが抑えられ、テーブルに座ったままでも炎と鍋の様子を把握しやすい。
- ケース付きで運搬と保管が楽:本体とボンベをひとまとめにできるので、「あれ、どこに置いたっけ」と探す時間が減る。ベランダや別室への移動も片手で完結する。
- 着火の確実さと火力のレスポンス:点火が一発で決まり、火力調整に対する反応も速いので、湯せんやソースの保温など、温度の変化に敏感な作業に使いやすい。
- 静音性の高さ:中火〜強火でも耳障りな音が少なく、夜間や集合住宅でも気兼ねなく使えるレベル。撮影現場で収音している場面でも邪魔になりにくかった。
- 掃除と手入れのしやすさ:フラットな面が多く、油跳ねも布巾でさっと拭き取れる。凹凸が少ないので、日々のケアが苦にならない。
- 低重心による安定感:薄型ながら本体の重心が低く、普段使うサイズの鍋やフライパンであれば、ぐらつきはほとんど気にならない。
気になる点・注意したい点
- 極低火のキープには慣れが必要:ごく弱い火で長時間キープしたい場合、ツマミの微妙な位置を指先で覚える必要がある。初回は少し練習した方が安心。
- 五徳と小さな器の相性:極端に小さい鍋や底の尖ったボウルだと、五徳の上で角度がつく場合がある。通常サイズの片手鍋やフライパンとの相性は良好だが、器具側の選び方は少し意識したい。
- 使用直後の収納タイミング:長時間使った直後は、本体がほんのり温かい状態でケースに収めることになる。数分おいてから収納した方が、ケース内の熱こもりを防げる。
- テーブル上での存在感が薄め:良くも悪くも背が低いので、最初のうちは炎の状態を確認するのに近づいて覗き込みがち。「ちゃんと火がついているか」をこまめに視認するクセがつくまでは注意したい。
- 収納スペースにケースの大きさを考慮:ケースはきちんとした造りで安心感がある一方、それなりの厚みもある。シンク下や棚のスペースを事前にイメージしておくと、置き場に迷わずに済む。
とはいえ、これらの「気になる点」は致命的な欠点というより、「使い方のコツ」として折り合いをつけられるレベルだと感じた。実際、自分の環境では数日も使えばほとんど気にならなくなり、「この薄さとケース込みの構成で、この使い勝手ならアリだな」と納得できている。
まとめ
薄型で安定、これが最初の印象。イワタニ カセットフー 達人スリムV ケース付き CB-TS-5-Aは、テーブルに置いたときの圧迫感が少なく、作業動線を崩さない。火の立ち上がりは速く、つまみのトルク感も素直で、微調整は慣れると十分。実際に使ってみて、見た目のスマートさが単なる装飾ではなく、手元の扱いやすさにそのまま直結していると感じた。満足した点は、薄型ゆえの鍋底の近さによる熱の通りの早さ、五徳のホールド感、そして付属ケースでの持ち出し・保管が一括で完了する整理の楽さだ。
惜しい点は、五徳の汚れが隙間に残りやすく掃除に少し手間がかかること、ケースが収納場所を選ぶこと、極低火でのキープはコツが必要な場面があったこと。ただ、このあたりは「付き合い方を理解すれば大きな問題にはならない」種類の癖だと感じている。薄型ゆえの視界の良さと、サブ火口としての使い勝手を一度体験してしまうと、従来の背の高いカセットコンロにはなかなか戻りにくい。
向いている人は、普段は据え置きのコンロを中心に使いつつ、週末にテーブルで「仕上げ」を楽しみたいホストタイプ、キッチンで同時進行の試作を回すフードクリエイター、賃貸でビルトインを極力汚したくないミニマル志向の生活者。例えば、テーブルで香り付けや焦げ目の最終工程だけを軽やかに行う、朝の短時間で一品を仕上げる、来客時に器と火の距離感を演出して会話を引き出す、といった“主役級ではないけれど重要な役回り”にぴたりとハマる。
長期的には、ボンベ調達の容易さ、ケースでの保管が習慣化しやすく劣化リスクを下げられること、そして使うたびに「薄くて扱いやすい」は小さなストレスを確実に減らしてくれる点が効いてくる。派手ではない。だが、出番が来たときに必ず役目を果たす。その確実さに、買って良かったと素直に思える一台だった。
引用
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